強制執行
はじめに
当事務所には「離婚時に取り決めた慰謝料が払われない」「最近、養育費の振込みがなくなった」など、離婚時に決めた約束が守られずに困っているというご相談が数多く寄せられます。
離婚に際しては、養育費・慰謝料・財産分与など様々な事柄について取り決めをすることがあります。しかし、離婚後に、相手方がこうした取り決めの内容を守ってくれるとは限りません。
そのような場合に、取り決めた内容を強制的に実現するための制度があり、これを『強制執行』と呼びます。ここではとくに、養育費・慰謝料・財産分与などの財産的給付に関する強制執行について解説します。
強制執行の具体的方法
財産的給付に関する強制執行の具体的方法としては、『差押え』があります。
『差押え』とは、取り決めの内容を守らなかった人が保有している財産をお金に換えて、給付の内容を強制的に実現する手続です。差し押さえることができる財産としては、以下のものがあります。
・不動産 土地、建物
・動産 現金、自動車、貴金属など
・債権 預貯金、給与の一部、売掛金、生命保険等各種保険の解約返戻金など
裏を返せば、相手が上記のような財産を全くもっていない場合には、差押えの方法をとっても金銭的な満足を得ることは難しいのです。また、財産をもっていたとしても、預貯金がどこの金融機関に存在するかわからない、離婚後に勤務先が変わってしまった、などの理由で差押えが困難な場合もありえます。
このような事態を防ぐためにも、離婚後に財産的給付を受けようと考えているのであれば、離婚前に相手がどのような財産をもっているかをきちんと把握しておくことが大切といえるでしょう。
弁護士は、こうした差押えの前提となる相手方の財産調査についてもサポートが可能です。
強制執行ができる場合とできない場合
取り決めの内容を守らなかった場合に、直ちに強制執行ができるかどうかは、取決めがなされた方法・手続によって異なります。
財産的給付が、裁判所の手続(調停、審判、裁判)で取り決められているときや、協議離婚であっても公正証書(※執行認諾文言のあるもの)が作成されているときには、直ちに強制執行の方法をとることができます。
一方、財産的給付について、口頭で合意したにすぎない場合や、書面が作成されていても公正証書化されていないような場合には、強制執行の方法をとることはできません。この場合、強制執行をするには、合意の内容を公正証書化するか、裁判所の手続(調停、審判、裁判)を経る必要があります。
財産的給付の実現について少しでも不安がある場合には、あらかじめ合意した内容を公正証書化しておくか、裁判所の手続(調停、審判、裁判)を利用することが大切といえるでしょう。