親権者について
未成年の子どもがいる夫婦の場合、離婚に際して、親権の問題を避けて通ることはできません。
「親権だけはどうしても譲れない」と思われる方も多いでしょう。大切なお子さんの問題ですから、しっかりと考えて決める必要があります。
そもそも、未成年の子どもがいる場合、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ、離婚自体ができないことになっています。
子どもについて、離婚後も夫婦の共同親権とするということもできません。夫婦のどちらかを親権者として定めなければならないわけですが、話し合いがまとまらなければ、調停や裁判で決めざるをえません。
なお、既に成人している子どもの場合や、未成年の子であっても既に婚姻している場合には、親権を定める必要はなくなります。
調停や裁判における親権者を定める基準としては、以下のようなものが考えられます。
1 環境の継続性
現在、実際に子を養育監護している者が優先されます。
現在の安定している環境を変えてしまうことが、子の情緒や人格形成に悪影響を与える可能性があるという理由からです。実際に監護していない親が親権を取る場合もありますが、稀なケースといえます。
2 監護に向けた状況
経済状況、資産状況、居住環境、家庭環境などが判断材料になります。
健康状態なども含め、様々な要素が考慮されます。
3 子の意思の尊重
15歳以上の未成年の子についてはその意思を尊重します。
調停などでは、家庭裁判所調査官が子どもの面談などを行い、子の意思を確認しています。
親権について子ども自身に意見を聞くことは、子どもにとって大変なプレッシャーになりますから、裁判所では子どもが傷つかないような配慮の上で聞き取りを行っています。
4 兄弟姉妹関係の尊重
血のつながった兄弟姉妹を分離することも、子の人格形成に深刻な影響を及ぼす可能性が高いといえます。
兄弟姉妹を一緒に育てることを原則として考えている判例もあります。
5 親族の協力
上に述べたように経済状況や家庭環境が判断材料になるわけですが、本人だけでは十分な養育が困難であっても、親族の協力が得られる場合にはそのことがプラスの要素として考慮されることがあります。
6 子どもに対する愛情・養育の意思
子どもに対する愛情と監護養育の意思があることは、親権が認められる大前提といえます。
ただし、親権が争われている場合には、当事者双方に強い愛情や意思があることがほとんどなので、これらが決定的な差になることはあまりないでしょう。
これ以外にも様々な要素が考慮され、総合的に判断されることになりますが、最も重要なのは子ども自身の利益・幸福であることはいうまでもありません。
親権の問題は、大切な子どもの将来に関わる重要な問題です。重要な問題であるがゆえに、当事者同士の話し合いでは感情的になってしまい、話が進まないこともあるでしょう。
ぜひ、専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。