《コラム》親子関係を調査するDNA鑑定
DNA鑑定はどのように行われているか
血縁関係が疑われる父子関係の調査や、出生前診断や犯人特定のためなど、DNA鑑定が幅広い分野で使われるようになりました。
弁護士が扱う家事事件においても、非嫡出子の認知請求や親子関係不存在の確認請求等の案件で、DNA鑑定が利用されています。
こちらのページでは、DNA鑑定がどのように行われているのかご紹介いたします。
DNA鑑定とは?
DNA鑑定とは、DNAを構成している塩基の配列パターン、いわゆる「DNA型」を調べることにより、「検査対象男性」と「子」との間に血縁的父子関係が存在するかどうかを科学的根拠に基づき分析する方法のことです。
家事事件においては、非嫡出子の認知や親子関係不存在の確認など様々なケースで、当事者間の血縁的父子関係の有無を調査するべくDNA鑑定が利用されており、その調査結果を証拠として裁判所に提出することがあります。
上記の父子関係のほかにも、母子関係や兄弟姉妹関係、祖父母と孫の関係を調査するものもあります。また、胎児の出生前診断や犯人特定などにもDNA鑑定が利用されています。
DNA鑑定ってどうやるの?
DNA鑑定は、一般向けにDNA鑑定を行っている民間の会社や研究機関があり、どなたでも簡単に申し込むことができます。
会社や研究機関によって様々なコースが用意されていますが、ほとんどの場合、大きく分けて「私的鑑定」と「公・法的鑑定」の2種類が用意されています。
「私的鑑定」
血縁関係が本当にあるのか確証がほしいなど、あくまで個人的に確認するためのものとして利用されることが多いです。
鑑定の方法としては、鑑定申し込み後に会社から送られてくる検査キットを用いて、鑑定に必要な検体を採取し(多くの場合は、頬の内側を擦って口内上皮を採取します)、その検体を鑑定会社宛に郵送し、専門家に鑑定してもらう簡易検査が一般的です。
「公・法的鑑定」
実際の裁判でDNA鑑定の結果を証拠として提出する際に利用されます。そのため、DNA鑑定を行うには、鑑定に関わる当事者の同意が必要である点や、鑑定に必要な検体の採取は、鑑定を行う会社の社員や研究員等の第三者の立会いの下で行うという点で私的鑑定よりも厳重に行われます。
鑑定にかかる日数は、早いもので約3日というプランもありますが、10日前後かかるのが一般的です。
費用はどの程度かかるの?
DNA鑑定の費用は、調査項目や鑑定会社にもよりますが、私的鑑定であれば、約3万円から申し込むことができます。
他方、公・法的鑑定となると、前述のとおり、鑑定会社の社員や研究員など第三者立会いの下で行うため、立会いにかかる費用や裁判所などに提出する公的書類の作成にかかる費用等が加算されます。そのため、最低でも約8万円前後の費用が発生し、私的鑑定に比べて高額となっています。
DNA鑑定の結果は裁判で重視されるの?
現在の技術によれば、DNA鑑定は100%に近い確率で客観的に血のつながりを確認することができるとされています。裁判による認知請求の場合には、DNA鑑定の結果が重視されるので、DNA鑑定の結果により血縁上、「父」とされた者が、法的にも(戸籍上も)「父」であると認定されることになります。
他方、親子関係不存在確認訴訟において、長年にわたり血縁関係のない父子が、親子として社会生活を送ってきた事案等では、DNA鑑定によれば血縁上の父子関係は認められなくとも、それまでの親子として生活実態を重視して、血縁関係のない父子を法的な親子と認めることもあり得ます。
DNA鑑定をするということは、結果がどうであれ、家族間に大きな禍根を残すきっかけとなることもあります。DNA鑑定を利用する際には、そのような事もよく検討したうえで役立てることが望ましいでしょう。