夫婦の生活を分離するのは大変?~夫婦間で離婚の合意はあるのに、離婚成立まで長引く場合とは~(弁護士:細野希)

この記事を執筆した弁護士

弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:新潟大学法科大学院修了
新潟県都市計画審議会委員(2021年~)、日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年~)を務めています。
主な取扱分野は、離婚と交通事故。そのほか、金銭問題、相続など幅広い分野に対応しています。数多くの企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。
依頼者の方の悩みを聞き、判例や実務の考え方を考慮しつつ、採り得る選択肢を示して、依頼者の悩みや不安を少しでも軽減できるように努めます。

夫婦が互いに離婚を望んだときでも、直ぐに離婚が成立する夫婦もいれば、なかなか離婚できない夫婦もいます。

夫婦関係が悪化していると、互いに円満に話し合えず、離婚の話が進まないことはあると思います。

一緒に暮らしていた夫婦の生活を分離することは、思っている以上に労力を費やすのだと思います。


夫婦で離婚の合意があるのに、離婚成立まで時間がかかる場合を挙げてみたいと思います。

1 親権者が決まらない

夫婦間に未成年者の子どもがいるときに、親権者を定めて離婚をする必要があります。


離婚後の共同親権の議論はありますが、現行法では、父母のどちらか一方を親権者として定めて離婚をすることが求められています。


夫婦が、互いに親権者になることを希望すると、簡単には譲らないことも多いので、離婚の話がなかなか進まない要因になります。


兄弟姉妹の人数が多ければ、1人ずつ親権者を決める必要があるので、その分、時間も要します。


協議で親権者が決まらないと、家庭裁判所へ離婚調停の申立てをして、それでも親権者の合意ができないと、離婚訴訟の提起をすることになるので、紛争が長期化することに繋がります。


また、家庭裁判所で争うような場合、夫婦が別居していることも多いですが、親権者を決めて離婚するまで、どちらが子どもを監護するのかでも揉めることもあります。


この場合、離婚調停又は離婚訴訟とは別に、子の監護者指定・子の引き渡し調停又は審判の申立てをし、家庭裁判所で審理することもできますが、その中で調査官調査が行われることもあり、結論が出るまでに時間かかることも多いです。


夫婦間で離婚の合意があっても、子どもの親権者や監護者の合意ができない場合には、子どもが父母のどちらと生活するのがいいのかを決めなければなりません。

子どもの将来の生活環境にもかかわる話なので、夫婦は、それぞれに悩みながら、親権者を決めているのだと思います。

2 財産分与の対象となる財産が分からない

離婚する際、互いに財産があまりないと認識していると、財産分与を特に検討することもなく、各自が自己名義の財産を取得することにして、何も協議することなく離婚する夫婦も多いと思います。


しかし、夫婦のうちどちらか一方が財産を管理し、他方が夫婦の共有財産を全く把握していない場合には、相手方に預金通帳などの財産資料を開示させることから始めなければなりません。

相手方が、すぐに財産資料を開示してくれるのかという問題もありますが、離婚を検討している夫婦の場合、信頼関係が崩れているので、一方が、「これしか財産がない」と言って財産資料を開示しても、他方は、「なんでこれしか財産がないんだ、もっと財産があるはずだ」等と言って、簡単に財産分与の合意にならないことがあります。


夫婦であっても、互いに全ての財産を把握しているわけではないので、財産が分からないと、財産分与の話し合いが進まない要因になります。


なお、財産分与は、離婚後2年以内であれば家庭裁判所に調停又は審判の申立てをすることができるので、財産分与の取り決めをする前に、離婚を先行させることは可能です。


もっとも、離婚時に自分の貯金をほとんど持っていない人の場合、引っ越しや転居先確保のための費用の捻出をどうするのかという問題がでてきます。

また、離婚を先行させると、配偶者に扶養義務がなくなるので、婚姻費用がもらえず、財産分与がもらえるまでの間、日々の生活費をどうするのかも検討していかなければなりません。


高齢者の離婚の場合、貯金や退職金などの財産をあてにして、老後の生活設計をしていることも多いので、適正な財産分与の金額を決めることは重要になると思います。

3 面会交流の条件が決まらない

親権者や監護者とならない者が、離婚後、離れて暮らす子どもとの面会交流を望む場合、その頻度や時間等の条件で揉めることがあります。


子どもが、ある程度の年齢であれば、子どもの面会交流に対する意向も明確になるので、子どもの意向を尊重して、離婚を進めることも多いと思います。


しかし、子どもがまだ幼いと、その意向も明確ではないので、離婚後も、互いに協力して日時や場所を決めて面会交流を実施していく必要があります。


離婚後も、柔軟に面会交流の段取りを協議できるような関係ならばいいですが、離婚し、互いに顔も見たくないような関係だと、離婚後に面会交流が上手くできない場合もあります。


離婚時に親権を譲る前提として、離婚後の面会交流の充実を求める方もいますので、一方の配偶者が面会交流に強いこだわりがあると、その条件を決めるために協議が長引くこともあります。

面会交流は、実際にやってみないと上手くいくかどうか分からないこともあるので、子どもの意向などにも配慮しながら、協議していくことが求められます。

4 住宅ローンがある自宅の取り扱いが決まらない

夫婦で自宅を購入し、多額の残ローンがある場合、離婚後に、どちらかが自宅を取得するのか、又は、誰も取得しないで売却するのか、住宅ローンの支払いはどうするのかが問題になることがあります。


当該自宅の名義人、住宅ローンの債務者、連帯保証人の有無、住宅ローンの契約内容などもあるので、それを踏まえて、離婚後の自宅の取り扱いを決める必要があります。


同居中は、家計が一緒で、夫婦が協力して住宅ローンが支払えても、離婚後は、経済的に分離して生活することになるので、今まで支払えていた住宅ローンが支払えなくなることもあります。


また、一方が自宅の取得を望まず、他方に自宅を譲るとしても、銀行との関係で、住宅ローンの債務者や連帯債務者になっている場合、住宅ローンの支払いを怠れば、自宅で暮らしていなくても、銀行からの返済を求められるので、注意が必要です。


自宅の名義変更や住宅ローンの取り扱いは、貸主である銀行との契約内容も絡んでくるので、夫婦の意向のみでは決められないと思います。


また、離婚に伴い自宅の名義変更を希望する場合、住宅ローンの契約内容を確認したり、銀行との間で借り換えを協議したりすることがあるので、当事者のみの意向で進められず、協議が長引く要因になることもあります。

5 おわりに

離婚成立まで長引くかどうかは、各ご家庭の個別具体的事情により異なるので、一概には言えないのかもしれません。


しかし、離婚が長引くことになる主な原因は、夫婦が離婚を考えるとき、既に信頼関係が崩れており、互いに円満な話し合いができないことが多いことからだと思います。


夫婦で話し合おうとしても喧嘩になる、互いに譲歩せずに話し合いが平行線のままになるなど、建設的な話し合いが難しい状況になっているので、離婚が進まない要因になるのだと思います。

離婚の話し合いで硬直状態が続くと、夫婦双方とも精神的にストレスを抱えて不眠になるなどの症状が出て、日常生活にも影響が出ることになってしまいます。


離婚の話は、1人で抱え込まず、誰かに聞いてもらうことによって、不安や心配が軽減できることも多いと思います。

一人で悩まずに、専門家の意見を聞いてみるということも、現状を変えるきっかけになると思いますので、離婚のお悩みや不安を抱えている場合、当事務所をご相談いただければと思います。


※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

「離婚」「男女問題」「親権」「養育費等」「男女問題」「面会交流」「財産分与」「慰謝料」などについてお悩みの方、弁護士をお探しのみなさまは、一新総合法律事務所までどうぞお気軽にお問い合わせください。
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