協議離婚と調停離婚の違いとは?メリット・デメリットを比較

\このコラムでわかること/
・協議離婚と調停離婚の手続きや費用の違い
・協議離婚、調停離婚それぞれのメリット・デメリット

この記事を監修した弁護士

弁護士 中澤 亮一

中澤 亮一
(なかざわ りょういち)

一新総合法律事務所 理事/上越事務所長/弁護士

出身地:新潟県南魚沼郡湯沢町 
出身大学:早稲田大学法科大学院修了
国立大学法人における研究倫理委員会委員、新潟県弁護士会学校へ行こう委員会副委員長などを務める。
主な取扱分野は、離婚、金銭問題、相続。また、企業法務(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)などにも精通しています。

離婚の方法として、当事者である夫婦が話し合い、双方の合意を得ることで離婚を成立させる「協議離婚」を一番に思い浮かべる方が多いかと思います。

実際に、日本における離婚の約9割が協議離婚によるものとされています(※厚生労働省:令和2年の統計結果による)。


当事者同士での話し合いでは合意できない場合は離婚裁判になるのかというと、そうではなく、第三者(調停委員)を通して話し合う「調停離婚」という制度があります。

協議離婚、調停離婚のどちらも「夫婦の話し合いによる離婚」という位置づけになりますが、協議離婚と調停離婚の違いはご存じでしょうか。


本コラムでは、協議離婚と調停離婚の手続きや費用などの違いを比較し、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

協議離婚と調停離婚の違いを正しく理解することで、あなた自身にとって最適な離婚手続きの方法を見つけましょう。

1.協議離婚と調停離婚

離婚の方法には大きく分けて協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4種類があります。


それぞれの離婚方法には異なる手続きと特徴がありますが、日本における離婚問題は、協議→調停(→審判)→裁判の順序で進んでいきます。

今回は裁判になる前の離婚方法である、協議離婚と調停離婚について比較していきます。

離婚の方法4種類と離婚成立までの流れ
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協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦間で離婚の意思や条件について直接話し合い、双方の合意を得ることで離婚を成立させる方法です。

裁判所を通さずに夫婦間での合意だけで離婚が成立するため、手続きが簡潔であり、話し合いですぐに合意が得られれば時間も費用も抑えられます。


夫婦2人だけで完結する場合だけでなく、離婚条件についての話し合いや調整を弁護士に依頼し、弁護士が代理人として離婚協議を行う場合も協議離婚になります。

調停離婚とは

一方、調停離婚とは、家庭裁判所の離婚調停によって第三者である調停委員が間に入って夫婦の話し合いを進める手続きです。調停は裁判所で開かれますが、裁判ではなく、あくまで第三者を含めた話し合いという位置付けになります。


離婚調停は、通常、家庭裁判所が選任した2人の調停委員が、夫婦双方の言い分を個別に聞き取る方法で、意見の調整を行いながら離婚の合意を目指します。

聞き取り時間は1回の調停につき30分程度で、離婚調停の際にお互いに直接顔を合わせたり 、話し合う必要はありません。


話し合いではなく、すぐに裁判を起こして離婚成立を目指したい場合でも、日本では「調停前置主義」といってはじめから離婚裁判を行うことはできず、離婚調停を先に行わなければならないとされています。

2.協議離婚と調停離婚のどちらを選ぶべき?

協議離婚と調停離婚のメリット・デメリット

①第三者の介入の有無

協議離婚】
夫婦二人の話し合いで完結するが、直接の話合いによるストレスや、不利な離婚条件で合意する可能性がある
調停離婚】
第三者の介入により直接対話する必要がなく冷静な話し合いができる、公平な離婚条件での合意を目指せる 

協議離婚と調停離婚の大きな違いは「第三者が介入するか・しないか」です。

協議離婚は夫婦間の直接的な話し合いによって離婚条件の合意を目指すのに対し、調停離婚は第三者(裁判官・調停委員)が間に入り、離婚条件を整えながら離婚の成立を目指します。


離婚の話し合いが進まない原因として、離婚をすること自体に合意ができていても、離婚条件(財産分与、年金分割、慰謝料、未成年の子どもがいる場合には親権者、養育費、面会交流など)について双方が譲らずに、感情的になってしまいなかなか合意できないことがあげられます。

また、相手からのモラハラや暴力(DV)などがある場合は当人同士による話し合いは難しく、場合によっては身の危険も考えられることから、避けたほうが良いでしょう。


このような事情で話し合いが難しい場合には、調停離婚を選択することで、相手と直接話し合う精神的なストレスから解放されますし、第三者が介入することで話し合いがスムーズに進められることが期待できます。


また、協議離婚では離婚条件についての取り決めがおろそかになりがちです。

言われるままに相手の言い分を聞き入れてしまい、一方が不利な条件を受け入れてしまうといったことが少なくありません。

調停離婚では、調停委員が中立な立場で双方の意見を聞き、公平な解決策を見つけられるように調整を図ります。

協議離婚で話し合いを進める場合でも、離婚条件については不利な条件で合意することがないよう、弁護士に相談し意見を求めることをおすすめします。

②取り決めた離婚条件の約束が守られなかったとき

協議離婚】
離婚条件について公正証書の形式で残していない場合、不払いが発生した場合にはすぐに強制執行できない
調停離婚】
調停調書が必ず作成されるため、不払いが発生した場合もすぐに強制執行が可能

離婚をする際には離婚条件について法的に効力のある「公正証書」の形式で残すことがとても重要になります。

特に夫婦のみで話し合う協議離婚の場合では、離婚協議書を公正証書で残しておらず、離婚後に財産分与や養育費の支払いについて約束が守られずにトラブルになるケースは少なくありません。

離婚条件について法的に効力のある書面が残っていない場合には、最悪の場合、不払いのままになってしまう可能性もあります。


離婚後に約束した金銭が支払われなかった場合の、それぞれの回収までの流れは以下の通りです。

■養育費の場合

(強制執行認諾文言付の) 公正証書がある場合…
すぐに相手の給与や預貯金などの資産を強制執行(差押え)することができます。

公正証書がない場合…
家庭裁判所に「養育費調停」の申立てを行い、調停成立もしくは不成立の場合でも審判により相手に支払い命令が出た場合には、その内容にしたがって養育費の支払い請求ができます。


■慰謝料の場合

公正証書がある場合…
すぐに相手の給与や預貯金などの資産を強制執行(差押え)することができます。

公正証書がない場合…
相手に対し、地方裁判所に「慰謝料請求訴訟」を提起する必要があります。
訴訟で適切に主張立証できれば、請求認容判決(支払を命じる判決)が下されます。
相手が判決に従わない場合には、強制執行(資産の差押え)を行い慰謝料を回収します。


■財産分与の場合

公正証書がある場合…
すぐに相手の給与や預貯金などの資産を強制執行(差押え)することができる

公正証書がない・財産分与の取り決めがない…
離婚時に財産分与の取り決めをしなかった、公正証書のかたちで残していなかったという場合は、家庭裁判所に「財産分与調停」の申立てを行い、調停で財産分与について合意できれば、合意した内容での財産分与がなされます。
合意できなかった場合、自動的に審判手続が開始され、裁判官が必要な審理を行った上で、一切の事情を考慮して審判をすることになります。


協議離婚をする場合には、離婚協議書を公正証書で作成することにより、執行力が付与されます。

調停離婚の場合は、自分たちで何か書面を作成する必要はなく、離婚調停が成立すれば裁判所により執行力のある「調停調書」が必ず作成されます。


ここで気をつけたいのは、「離婚協議書」と「調停調書」では債権に対する消滅時効が異なる点です。

調停調書の場合には、どんな債権も消滅時効が10年となりますが、公正証書による離婚協議書の場合では消滅時効までの期間が短くなることです。

具体的には、財産分与は離婚から2年、慰謝料が3年、養育費が5年で債権消滅時効をむかえます。

③離婚成立までの期間

協議離婚】
法的な手続きは不要、お互いのタイミングで話し合いを進められるため早期に離婚成立できる場合も
調停離婚】
スムーズに進行しても離婚成立までに半年から1年程度かかる、調停のたびに裁判所に出向く必要がある

協議離婚の場合は、裁判所への面倒な法的手続きは不要で、極論で言えば離婚条件を決めなくても離婚届にサインして提出してしまえば協議離婚が成立します。

お互いのタイミングで話し合いを進めることができるので、夫婦間での話し合いが可能であり、お互いに歩み寄る姿勢があれば、短期間での離婚が可能となります。

ただし、話し合いに応じてもらえない、お互いが一歩も譲らないといった状況になった場合には、結果的に離婚成立まで長い時間を要することになってしまいます。


一方で、調停離婚の場合、一般的な離婚成立までの期間は、スムーズに調停が進行した場合でも半年から1年程度となります。

離婚調停の回数に規定はありませんが、調停期日は1ヵ月に1回程度の目安で開催されることが多く、当職のこれまでの経験からすると、期日回数は4~6回位が多いように思います。

調停は平日に行われ、家庭裁判所に出向く必要がありますので、調停のたびに仕事を休まなければならなくなる方もいるといったデメリットもあります。


また、離婚調停はあくまで夫婦間双方の言い分や希望を聞き取り、お互いの意見を調整する場であるため、調停委員が介入しても離婚条件について双方の合意が得られなかった場合には「調停不成立」となり離婚成立とはなりません。

④離婚に係る費用

協議離婚】
夫婦のみで合意できれば費用が抑えられる
調停離婚】
調停申し立て費用や弁護士費用など、協議離婚と比較し費用がかかる

協議離婚の大きなメリットは、何といっても手続きが簡単で費用が抑えられることです。

夫婦のみで合意ができる場合は基本的には費用はかかりません。

考えられる費用としては、離婚協議書を公正証書で作成する費用と、離婚条件の調整などで弁護士を代理人として離婚協議を進める場合の弁護士費用です。


調停離婚の場合には、法的な手続きが必要となるため、家庭裁判所への調停申し立て費用(※具体的には後述の費用の箇所に記載します)のほか、弁護士を代理人に立てる場合には弁護士費用が発生します。

また、申し立てには、申立書、夫婦の戸籍謄本(※別途発行費用)、年金分割のための年金情報通知書の準備が必要です。

3.協議離婚と調停離婚の手続きと流れ

次に、協議離婚と調停離婚の手続きと流れについて、それぞれの違いや注意点を見ていきたいと思います。

①協議離婚の手続きと費用

協議離婚は、当事者間の話し合いで合意が得られれば、離婚届を提出するだけで成立します。


具体的な手続きとしては、まず夫婦間で離婚の意向を確認し、次に離婚条件(財産分与、年金分割、子供の養育費や面会交流など)について話し合います。

合意した離婚条件について記載した書面(離婚協議書)を作成し、両者が署名します。

離婚協議書は先述したとおり、離婚後のトラブルを防止するためにも弁護士などにより公正証書のかたちで作成することをおすすめします。


そして届出人の本籍地又は所在地の市区町村役場に離婚届を提出し、内容が確認・受理されれば離婚が成立します。

離婚届は、各市区町村の窓口(市民課や戸籍課)でもらうことができますが、近年では市町村によってはインターネット上でダウンロードも可能です。


離婚届には当事者双方の署名、捺印のほか、証人2名の署名捺印が必要となります(※ただし、証人が外国籍の場合は署名のみでも可)。


このようにスムーズに進めば、数日から数週間のうちに離婚が成立する場合もあります。


費用面では、基本的に役所に提出する離婚届の費用は不要ですが、離婚条件についての調整や、公正証書の作成について弁護士や専門家に依頼する場合はその報酬が発生します。

ただし、弁護士を介さずに直接交渉を行えば、費用はほぼ発生しません。


協議離婚は手続きが簡単で、費用もあまりかからないため、離婚に対して話し合いが可能で、合意ができている夫婦には適した方法であると言えます。

②調停離婚の手続きと費用

調停離婚は「話し合い」ではありますが、法的手続きが含まれますので、費用と手続きの手間が発生します。


具体的には、まず家庭裁判所に離婚調停の申立て(調停申立書を家庭裁判所に提出)をする必要があります。

申立て費用として、家庭裁判所に納める収入印紙(1,200円分)と連絡用切手代(管轄の家庭裁判所により異なる)、また、弁護士を依頼する場合、その費用も考慮する必要があります。

さらに、調停の進行過程では複数回の出頭が求められることがあり、その度に交通費や時間を費やすことになります。


申し立てが受理されると、家庭裁判所から調停期日が指定されます。

調停期日には申立人と相手方、そして調停委員が出席し、離婚条件について話し合います。

調停委員は中立の立場から双方の意見を聞き、合意に向けた調整を行います。

調停では夫婦がお互いに顔を合わせることはなく、調停委員が順番に夫婦双方の言い分や条件などについて聴き取りを行う形で進められます。

調停の聴き取り時間は1回の調停につき30分×2回もしくは3回程度ですので、自分の主張や、譲れない条件などについて調停の前に優先順位を決めておくとよいでしょう。


調停が成立すると、法的な執行力をもつ調停調書が作成されますので、その調停調書と離婚届を、調停成立の日を含めて10日以内に役所に提出することで離婚が成立します。

調停不成立となった場合には、再度協議を行うか、離婚裁判を申し立てることになります。


調停離婚は協議離婚と比べて手続きが複雑であり、費用と時間がかかりますが、法的な効力を持つため離婚後のトラブルを防ぐことができるでしょう。

必要に応じて弁護士などの専門家の力を借りることで、調停離婚をスムーズに進めることができます。

4.離婚についての話し合いを弁護士に相談するメリット

協議離婚と調停離婚のどちらを選択する場合でも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

離婚の悩みは、個人的な要素が多く含まれており、なかなか親しい人たちにも相談できないものです。

あなたの現在の状況や、気持ちを弁護士に相談することで、現在抱えている不安や、自分の求める離婚の条件、離婚後の生活設計などについて考えを整理することができるからです。


また、弁護士に離婚に関する話し合いを相談するメリットとしては、相手から提示されている条件や要求が、法的な観点から問題がないのかを検討し判断してもらえることです。

離婚の際の取り決めに漏れがないように確認してもらうことで、離婚後のトラブルを防ぐことができます。


協議離婚であっても調停離婚であっても、財産分与や子供の親権に関する問題など、離婚条件について当事者間ではなかなか話し合いがまとまらずに精神的負担がかかることが少なくありません。

そのため、弁護士が間に入り、助言、交渉を行うことで、離婚交渉を不安なくスムーズに進め、公正な条件により納得できるかたちで離婚することができます。

また、書類作成や手続きのサポートも受けられるため、手続きのミスを防ぐことができます。


協議離婚から調停や離婚訴訟など法的な手続きへ進むことになった場合でも、始めから弁護士に相談しておけば安心して臨むことができるでしょう。


一新総合法律事務所では、離婚チーム所属弁護士が相談に対応いたします。

一人でお悩みにならず、まずはお気軽にお問い合わせください。

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