祖父母と孫との面会交流は認められるか?

1 子の父母以外との面会交流

夫婦が別居や離婚をしたときに、子は、両親のどちらか一方と暮らすことになりますが、その際、子を監護しない親が、子と直接面会したり、子と電話や手紙などの方法により間接的に交流したりすることを面会交流といいます。

面会交流は、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされていますが(民法766条1項参照)、離婚や別居により、夫婦関係が悪化していると、双方の協議では面会交流の話し合いが上手くいかず、面会交流が実施できないこともあります。

別居や離婚後に、子を監護していない父または母が、子との面会交流を求めることはよくありますが、子を監護していない父方または母方の祖父母が、子を監護している父または母に対し、会えない孫との面会交流を求めることができるのでしょうか。

学説上、父または母以外の第三者との面会交流を認めるべきかについて所説ありましたが、祖父母が孫との面会交流を求めた事件で、最高裁判所決定がありました。

2 最高裁判所令和3年3月29日決定

(事案の概要)

子をもうけた父母が、母方の祖父母宅で同居していましたが、子の父が、祖父母宅を出て別居を開始し、父と母は、別居以降も交替で子を監護していました。

母方の祖父母も母による子の監護を補助していましたが、その後、子の母が死亡しました。

子は、父が監護していましたが、祖父母は、孫との面会交流を求めて、家庭裁判所に親族関係調整調停の申立てをしました。

しかし、調停が不成立になったので、祖父母は、孫との面会交流を求めて審判の申立てをしました。

(判決内容)

最高裁判所令和3年3月29日決定は、父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、子の監護に関する処分として、父母以外の第三者と子の面会交流について定める審判の申立てはできないと判断しました。

その理由として、民法その他の法令において、事実上子を監護してきた第三者が、家庭裁判所に面会交流を求めるような規定がないことや、監護の事実をもって祖父母などの第三者を父母と同視することともできないとしています。

また、子の利益は、子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが、そのことは父母以外の第三者に面会交流の申立てを許容する根拠となるものではないと判示しています。

3 面会交流調停と親族関係調整調停の違い

上記決定がある前でも、面会交流調停の申立人は、子の父または母に限るというのが実務上の扱いでした。

そのため、本件事件の祖父母も、孫と会うために、最初に、面会交流調停ではなく、親族関係調整調停の申立てをしています。


親族関係調整調停は、親族間において、感情的対立や親族関係が円満ではなくなった場合、円満な親族関係を回復するための話合いのための調停です。

この調停は、面会交流調停と異なり、未成年者との面会交流のみを対象とせず、もっと幅広く、親族間で生じた問題を話し合うことができる調停です。

親族関係調整調停の申立てができる人は、相手方と親族関係にある者とされているので、祖父母であっても申立人となることができます。


もっとも、親族関係調整調停は、次のように面会交流調停と大きく異なる点があります。


通常、家庭裁判所において面会交流を求める場合、まず、面会交流調停の申立てをして、調停の中で話し合い、それでも話し合いがまとまらない場合には、審判手続きに移行し、裁判官の判断をもらうことになります。


他方、親族関係調整調停は、話し合いがまとまらない場合、調停が不成立になり、審判手続きに移行できないので、裁判官の判断がもらえないことになります。

つまり、祖父母が、孫と会いたいとして親族関係調整調停の申立てをしても、調停の中での話し合いが決裂すると、裁判官の判断がないため、何も解決しない事態が生じるのです。


このような理由から、上記事件の祖父母は、親族関係調整調停が不成立になった後、裁判所の判断をもらうために面会交流について定める審判の申立てをしていると思います。

しかし、最高裁判所は、従前、子とのかかわりがあった祖父母でも、面会交流について定める審判を申し立てることができないと判断しました。

4 まとめ

面会交流は、子が未成年者である期間の問題なので、子が成人に達した後、その子が、祖父母に会いたいと言った場合に交流が制限されるわけではありません。

また、この最高裁判所決定は、審判を申し立てることができないとしているだけなので、祖父母が、子を監護する父または母との間で任意に合意できるならば、子が未成年者である間でも、面会交流が制限されているわけでもありません。

しかし、子が未成年者である間に、子を監護している父または母と、祖父母が面会交流でトラブルになっても、家庭裁判所において、面会交流の審判を求めることができないことが明確になりました。

\ポイント/
両親の離婚後、祖父母との面会交流は…
①子が成人になった後、祖父母に会うことは制限されない。
②子の監護者から面会交流の合意を得られれば、子が未成年の間でも祖父母との面会交流はできる。
③子の監護者から面会交流の合意を得られない場合に、祖父母が孫との面会交流を希望しても、家庭裁判所で面会交流の審判を求めることはできない。

■もっと詳しく →面会交流について


※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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この記事を執筆した弁護士

弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県新潟市 
出身大学:新潟大学法科大学院修了
新潟県都市計画審議会委員(2021年~)、日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年~)を務めています。
主な取扱分野は、離婚と交通事故。そのほか、金銭問題、相続など幅広い分野に対応しています。数多くの企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。
依頼者の方の悩みを聞き、判例や実務の考え方を考慮しつつ、採り得る選択肢を示して、依頼者の悩みや不安を少しでも軽減できるように努めます。

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