不倫の後始末~慰謝料請求(弁護士:今井慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報(新潟県版)」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
今月のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、不倫の後始末~慰謝料請求です。
その1.世の中不倫の話ばかり
最近、アンジャッシュの渡部さんが不倫についての100分にも及ぶ記者会見で叩かれたことが話題になりました。
最近は不倫に限らず、「水に落ちた犬は叩け」みたいな話ばかりですが、安全なところで正義ヅラするのは、格好悪いですね。
また、タレントになられた元国会議員のご夫婦も「4年ぶり2度目の不倫」という、スポーツ選手の復活優勝みたいな見出しで話題になりました。
離婚はせず、奥様が相手の女性に対する法的手続を検討されていると報じられました。
不倫が多いのは有名人ばかりではありません。
最近、新潟地裁でも某裁判官が不倫の慰謝料裁判がたくさんあるという話をされていました。
その手前の弁護士を交えた示談交渉となると、もっとあります。
近年において、不倫が増えたのかどうかは分かりません。
どちらかというと、弁護士とその種の情報が増えただけかもしれません。
その2.慰謝料請求の実際は?
それでは、不倫をされた側は不倫相手にいくらくらい請求できるのでしょうか。
交通事故の入通院や後遺症の慰謝料のように、具体的な基準を明らかにした本があるわけではありませんが、実務の肌感覚としては、離婚しない場合は100~150万円、離婚した場合は200~300万円くらいが多いでしょうか。
もちろん不倫に至る夫婦関係の状況や、不倫の期間や頻度、夫婦関係の破壊の程度等により個別事案の金額は異なってきますが、一般的には、それほど高額にはならないでしょう。
次のポイントとしては、不倫は、配偶者と不倫相手とによる「共同不法行為」ですので、不倫相手が慰謝料を払った場合には、加害者仲間である不倫をした配偶者に求償という形で応分の負担を求めることができます。
つまり離婚をせずに家計の一体性が保たれている場合には、あくまで「家計単位」でみると、不倫された側が不倫相手からもらえるのは「半額」ということになります。
さらに、不倫相手にも配偶者がいる場合=「ダブル不倫」の場合には、不倫相手の配偶者から自分の配偶者が慰謝料請求をされるかもしれません。
すると、双方の夫婦が離婚しない場合、家計単位でみると、A家とB家との間をお金が行き来するだけとなり、結局、「そもそも慰謝料請求の意味があったのか」というオチになります。
最後に一言。
日本では、配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求は当然のように認められていますが、夫婦の問題として請求が認められない国も多いようです。
そういう意味では、あの芸能人のかつての名言(迷言)は本質を突いていました。
不倫は文化だ。