離婚に伴う健康保険の切り替え(弁護士:細野 希)
企業と離婚問題の第2回目のテーマは、従業員が離婚した場合の健康保険の取り扱いです。
会社の従業員が離婚する場合に健康保険の切り替えが必要になる場合がありますので、その手続きをご説明いたします。
夫婦が各自の勤務先で被用者保険に加入している場合
離婚前、夫婦が共働きで各自の勤務先で、それぞれが被用者保険(従業員が加入する健康保険)に加入している場合には、離婚後も従前どおりの健康保険を使えるので特段の手続きは不要です。
夫(又は妻)の被扶養者として健康保険に加入している場合
離婚前に、夫(又は妻)の被扶養者として健康保険に加入している場合には、離婚後、被扶養者でなくなるので、新たな保険への加入手続きをする必要があります。
被扶養者とは、被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人などをいいますが、離婚すると被保険者の配偶者ではなくなるので、健康保険の切り替えが必要になるのです。
大きく分けると①健康保険から健康保険への切り替えと②健康保険から国民健康保険への切り替えが考えられると思います。①の場合は、離婚後、自分の勤務先で被保険者として健康保険に加入できる場合や、家族(例えば、両親や子)の勤務先の健康保険に被扶養者として加入できる場合です。
婚姻期間中に使用していた健康保険証を会社に返還し、会社から、「資格喪失証明書」や「資格等取得(喪失)連絡票」等の被扶養者の資格を喪失したことを証明する書面を発行してもらい、その書面を、新たに加入する会社に提出し、健康保険への加入手続きをしてもらいます。
②の場合は、離婚後、どの会社の被用者保険にも加入できない場合です。
この場合、健康保険証を会社に返還し、被扶養者の資格を喪失したことを示す書面を役場に提出して国民健康保険への加入手続きをすることになります。
健康保険と国民健康保険は、前者は保険料が労使折半であるのに対し、後者は個人負担などの違いがあります。
保険料は日割り計算をしないので、月途中で加入した場合でも加入した月の分からの月割計算で保険料がかかります。
子どもの健康保険
子どもが被扶養者として会社の健康保険に加入していた場合、子どもの健康保険の取り扱いも問題になります。
両親が離婚しても、親子関係が終わるわけではありませんので、子どもは、離婚後も被保険者の子の地位があることに変わりありません。
もっとも、離婚後、子どもが主として被保険者に生計を維持されている人に該当しなくなった場合には、被扶養者の要件を満たさなくなりますので、健康保険の切り替え手続きが必要になります。
その場合、子どもについても、健康保険証を会社に返還し、資格喪失証明書等を発行してもらい、新たな加入手続きをすることになります。
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2021年6月5日号(vol.257)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。