給与が差し押さえられた際の対処(弁護士:楠浦 貴人)

この記事を執筆した弁護士

弁護士 楠浦 貴人

一新総合法律事務所
弁護士 楠浦 貴人

一新総合法律事務所・新潟事務所所属。 2019年弁護士登録。
弁護士として依頼者の満足度を高めるためには、依頼者の思いに応えた解決策を示し、さらに依頼者にその解決策についてご理解頂けることが必要と考えています。
そのためにもまず依頼者のお話を丁寧に聞き、真に求めている結果を導くことのできる解決策を真摯に考えたいと思います。

はじめに

養育費の支払いなどを滞らせていた場合、債権者が給与の差押え手続きをとってくることがあります。

今回は、裁判所から給与について債権差押命令が届いた場合の会社の対応についてお話しします。

債権差押命令が届いた場合の対処について

⑴ 早急に給与の支払いを止める

裁判所から債権差押命令が届いた場合、まずは債権差押命令記載の当事者目録と差押債権目録を確認してください。

債権差押命令が届くと差押債権目録記載の債権について、従業員に対して支払うことは禁止されます。

誤って従業員に全額支払ってしまった場合でも、会社はその支払いを差押債権者に対抗できず、差押債権者から取立てを受けた場合(=差押債権者に支払うよう言われた場合)、拒否できません。

⑵ 2週間以内に「陳述書」を提出する

債権差押命令には、通常、陳述書が同封されていますので2週間以内に必要事項を記載し、裁判所に返送してください。


もし、意図的に陳述をしなかった場合や失念した場合、差押債権者に損害が発生するとその賠償義務を負うことがありますので、きちんと返送しましょう。

取立てがあった際の注意

差押命令書が届いた後、しばらくすると直接差押債権者から会社宛てに、取立て(差押え債権者に支払ってくださいという連絡)が来ます。

取立の連絡は裁判所が間に入ることはありません。

差押債権者に直接、差押債権についてどこの口座に振り込めば良いのかなどを確認します。


但し、ここで注意が必要です。


法律上、差押債権者に取立権が発生するのは、裁判所から債務者である従業員に債権差押命令が送達された日から法定の期間が経過してからです。

給与債権の差押えの場合、請求債権に養育費や婚姻費用等の扶養義務に関するものが含まれている場合は1週間、含まれていない場合は4週間経過していることが必要です。


差押債権者に支払う前に、差押債権者から送達通知書や差押命令正本を示してもらい、取立権が発生していることを確認しましょう。


なお、振込手数料を会社が負担する必要はありませんので、手数料は差押債権者負担で大丈夫です。

供託の検討

債権差押命令が二つ届いた場合は、注意が必要です。

この場合は供託が義務になります。

差押債権者に支払うのではなく、差し押さえられた給与を法務局(供託所)に供託しなければなりません。


差押債権者との直接の協議を避けたい場合にも、供託すると良いでしょう。

供託をした場合は、同封の事情届を裁判所に提出する必要があります。


供託金を納めた後、供託書正本とともに、裁判所に提出をしてください。

終わりに

裁判所からの差押えに従わないと会社が損害賠償請求などを受ける場合もありますので、きちんと対応しましょう。

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2021年7月5日号(vol.258)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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