既に離婚していても共同親権に変更できる?裁判所が認める条件と手続きの流れ

(2026年10月2日公開)

2026年4月1日、離婚後も父母双方が親権を持ち続けられる「共同親権」を選べる制度が、改正民法の施行により開始されました。

これにより、すでに離婚して単独親権となっている場合でも、条件を満たせば共同親権への変更が可能になります。


ただし、制度が始まったからといって、単独親権が自動的に共同親権へ切り替わるわけではありません。

変更するには家庭裁判所での手続きと判断が必要です。


本記事では、既に離婚している場合の親権変更の基本ルール、変更手続きの流れ、認められやすい・にくい事情、養育費や親子交流への影響までを、離婚問題に注力する弁護士の視点から整理します。

1. 共同親権とは?単独親権との違い

親権とは、未成年の子どもの生活を守り成長を支えるための権利と義務のことで、子どもの日常の世話・しつけ・教育・医療などに関わる「身上監護権」と、子ども名義の財産の管理や契約に関わる「財産管理権」の2つに大別されます。


単独親権は、父親か母親のどちらか一方が親権者としてその役割を担う仕組みです。

子どもと同居する親(同居親)が意思決定を進めやすい一方、子どもと離れて暮らす親(別居親)は子どもに関する重要な情報を得にくく、関与が途切れやすいという課題が指摘されてきました。


共同親権は、離婚後も父母双方が親権者として関与し続ける考え方です。

ただし何でも二人で決めるという意味ではなく、進学や転居など重要事項は協議で決め、日常的な監護・教育は同居親が単独で対応できるなど、決め方を切り分けて運用することが前提になります。

項目共同親権単独親権
親権者父母双方が親権を持つ父母の一方のみが親権を持つ
重要事項の決定原則として父母が協議して決定親権者が単独で決定
日常的な行為同居親が単独で決定できる親権者が単独で決定
選択の原則子どもの利益を最優先に判断子どもの利益を最優先に判断

共同親権を選択した場合、進学先や転居、重大な医療行為の決定など子どもの生活に大きく影響する重要事項は父母が協議して決めることになります。

一方、日常的な監護・教育・習い事などに関する行為は現状通り同居親が単独で判断し決定することができます。

また、急迫の事情がある場合には、共同親権を選択した場合でも片方が単独で親権を行使できる例外も設けられています。


ただし、例外規定があるとはいえ、重要事項で対立が続けば子どもの生活・進学等に不利益が生じる事態となり、合意できない場合は家庭裁判所の関与が必要になることもあり得ます。共同親権を選択する前に、意思決定のルールと情報共有の体制を具体的に整えておくことが重要です。


※親権の基本的な内容や、単独親権・共同親権それぞれの決まり方については、親権についてのページもご覧ください。

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2. 共同親権はいつから?2026年4月施行の改正民法のポイント

共同親権制度は、2024年5月の民法改正により、2026年4月1日にすでに施行されています。


同時に「法定養育費制度」も新設され、離婚時に養育費の取り決めがなくても一定額を請求できるようになりました。

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3. 既に離婚している場合に知っておくべき基本ルール

既に離婚している場合に、共同親権制度が与える影響や変更手続について解説します。

自動的に共同親権へ切り替わらない

改正法の施行後も、離婚時の取り決めで既に単独親権で確定している家庭が、一律に共同親権へ移ることはありません。

過去の離婚条件が自動的に書き換わるわけではないからです。


法務省が公表しているQ&A(民法編)でも、改正法の施行前に離婚した父母についても、共同親権を含む親権者変更の申立てができることが明記されています。
(法務省:Q&A形式の解説資料(民法編) 父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議)

ただし申立てができることと、それが認められることは別問題であり、裁判所は子の利益の観点から事情を総合的に考慮して判断します。

共同親権へ変更するには家庭裁判所の手続きが必要

離婚後に単独親権から共同親権へ変更するには、家庭裁判所で親権者変更の手続きを行い、親権者を確定させる必要があります。

当事者間で合意していても、合意だけで法的に親権者が変わるわけではありません。


裁判所が判断する際の中心は、一貫して“子の利益”です。

これまでの親子交流の実績、連絡調整の方法、学校・医療情報の共有、養育費の履行状況など、共同で子育てが回る見通しを客観的に示せるかどうかが、結論に直結しやすいポイントになります。

詳しい手続きについては「6. 既に離婚している夫婦が共同親権へ変更する手続きの流れ」で解説します。

再婚したらどうなる?

共同親権を選択しているケースにおいて、父母のどちらか一方(または両方)が再婚しただけで直ちに実父母の親権関係が消えるわけではありません。

いずれか一方が再婚し、再婚相手と子どもの養子縁組をした場合には、養親とその配偶者である実親が共同親権者となり、他方の実親は親権者ではなくなります(新民法第818条第3項)。


ただし、15歳未満の子の養子縁組では親権者による代諾が必要で、共同親権の場合は実父母双方の共同代諾が原則です。

一方の親が養子縁組に反対する場合、「特定の事項に係る親権行使者を定める審判」を申し立てる余地はあるものの、代諾についてこの審判が認められるのは「子の利益のために特に必要がある場合に限り」(新797条4項)とされており、かなり限定的です。

つまり実親が養子縁組に反対した場合、それを押し切って縁組・親権移転を成立させるハードルは高いと言えます。


そのため、将来的に再婚相手との養子縁組を予定している場合は、共同親権の選択についても慎重に検討する必要があります。

4. 共同親権への変更を検討する際に押さえたいメリット・デメリット

既に離婚している場合、共同親権への変更にはメリットとデメリットの両面があります。

判断を焦る前に、家庭の状況に照らして冷静に整理しておくことが大切です。

共同親権へ変更することのメリット

メリットとして、別居親が親権者として重要な決定に関わり続けられ、子どもが両親とのつながりを保ちやすくなる点が挙げられます。

情報共有が進めば、進学や医療などの節目で子どもの困りごとを早期に把握しやすくなり、養育費の支払いや親子交流の安定にも良い影響が期待できます。

共同親権へ変更することのデメリット

一方でデメリットは、共同親権への移行について意見が対立し、親権争いが再燃してしまう恐れがあることです。

また、共同親権を選択することが決定した後では、重要事項のたびに協議が必要になるため、父母間の意見の対立により子どもの生活の意思決定が滞りやすくなることです。

特にDVやモラハラが絡む関係では、連絡の機会が増えること自体がリスクになり得るため、変更の検討は慎重に行う必要があります。


共同親権のメリット・デメリットをより詳しく知りたい方は、下記コラム「共同親権のメリット・デメリットとは?注意点をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

共同親権のメリット・デメリットとは?注意点をわかりやすく解説
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5. 裁判所が共同親権の可否を判断する基準

裁判所に変更を認めてもらうための重要な判断基準は、共同親権が子の利益のために必要かどうかです。

単に関与したい、決定に参加したいという親の平等や納得感だけでなく、子どもの心身の安全、生活の継続性、教育・医療環境、心理的安定など、具体的な生活への影響が問われます。


離婚後の実態、つまり親子交流が安定しているか、養育費の支払いを履行しているか、連絡や協議が一定程度できているか、決めるべきことを先送りせずに処理できているか等の父母の協力体制が重視されやすいのが特徴です。

子どもの年齢や発達に応じて意向も丁寧に確認されます。

必ず単独親権とするケース

なお民法819条7項では、①子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合、②父母が共同で親権を行使することが困難な場合(DVがある場合など)、③その他共同親権にすることで子の利益が害される場合には、裁判所は必ず単独親権と定めなければならないとされています。

共同親権は「認められれば良い」制度ではなく、安全が確保できて初めて選択肢に入る制度である点を押さえておく必要があります。


判断にあたっては、以下のような点が総合的にチェックされやすいと考えられます。

✓ 父母間で最低限の連絡・協議が成立しているか
✓ DV・虐待・モラハラの有無、過去の経緯
✓ 離婚後の親子交流・養育費の履行実績
✓ 子どもの年齢・意思、生活環境の継続性
✓ 重要事項の決め方について具体的なルール(連絡手段・期限など)を用意できているか

変更が認められやすいケース

父母が変更に合意しており子どもの生活に混乱が生じない見通しがある場合や、離婚後も別居親が親子交流・学校行事への関与・養育費の支払いなどを継続してきた場合は、認められやすい傾向があります。

変更が認められにくいケース

DVや虐待の疑いがある場合、強い対立で連絡・協議が成立しない場合、子ども自身が強く拒否している場合などは、共同親権の前提を欠くとして不利に働きやすくなります。


養育費の不払いも大きなマイナス評価につながります。

合理的な理由なく長期間支払っていない事情は、「養育への責任ある関与」が欠けると見られやすいためです。

未払いがある場合は、申立てに先立って支払状況を改善し、送金記録を証拠として整えておくと評価が変わりやすくなります。

6. 既に離婚している夫婦が共同親権へ変更する手続きの流れ

単独親権から共同親権へ切り替えるには、家庭裁判所に申立てを行い、親権者変更を認めてもらう必要があります。

父母が合意している場合

父母が合意している場合は、家庭裁判所に親権者変更の申立てを行い、調停手続きの中で内容を確認・調整して確定させる流れになります。

合意があっても手続きの省略はできない点に注意してください。


裁判所は、合意内容が子どもの生活にとって現実的かどうか(連絡手段、重要事項の決め方、情報共有、親子交流の運用が具体的か)を確認します。

共同親権への変更が確定したら、忘れずに役所へ届出をして戸籍に反映させましょう。

父母が対立している場合

父母が対立している場合も申立ては可能で、通常は調停から始まり、まとまらなければ審判に移ります。

DVや虐待、モラハラ、連絡手段の制限、親子交流の拒否など、子の安全や安定に直結する事情があると裁判所の判断は厳しくなります。


申立て先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

当事者の合意があれば、別の家庭裁判所を管轄先にできる場合もあるため、移動負担や子どもの生活圏も踏まえて確認するとよいでしょう。


必要書類は事件類型により異なりますが、一般的には申立書、戸籍謄本などの身分関係資料に加え、親子交流の記録、養育費の振込記録、連絡調整の履歴といった、子育てへの関与の実態を裏付ける資料・証拠が重要になります。

費用は収入印紙・郵便切手などの実費が基本で、弁護士に依頼する場合は別途費用がかかります。

争点が安全問題や高い対立に及ぶときは、早めに弁護士へ相談し見通しを確認するのが現実的です。

7. 共同親権になった後の運用:意思決定を止めない工夫

共同親権に変更できても、重要事項の協議が滞れば子どもの生活が止まってしまいます。これを防ぐ方法として、「監護者の指定」と「監護の分掌」があります。


監護者の指定とは、共同親権のもとで子どもと実際に同居して監護を担う親を明確にする取り決めです。

監護者に指定された親は、居所の指定や日常の監護・教育を単独で進めやすくなります。

監護の分掌は、「医療は一方、教育は一方」というように事項ごとに役割を分ける方法です。

分掌により権限を与えられた親は、その事項について他方の同意なしに単独で決定できます。


既に離婚している場合に共同親権への変更を申し立てる際は、こうした運用ルールもあわせて取り決めておくと、変更後のトラブルを防ぎやすくなります。

特に、転居・進学・入院を伴う医療など期限がある事項については、あらかじめ「誰が」「どのタイミングで」判断するかを明確にしておくことが、子どもの不利益を避けるうえで有効です。

8. 共同親権にすると養育費・親子交流(面会交流)はどうなる?

共同親権になっても、養育費は同居していない親が同居親に支払うという基本構造や支払義務そのものが変わるわけではありません。

親子交流も、共同親権になったからといって自動的に回数が増減するものではなく、子どもの生活リズムや意思を踏まえて設計することが重要です。


共同親権が影響しやすいのは、情報共有と意思決定の部分です。

進路・転居・医療方針などの協議が必要になる場面が増えるため、連絡手段、回答期限、緊急時の対応をあらかじめ決めておくと、子どもの生活が止まりにくくなります。

養育費や親子交流についてさらに詳しく知りたい方は、養育費について、親子交流(面会交流)についてのコラムもご参照ください。

9. 共同親権のよくある質問

Q. 相手が同意しない場合でも申立てできる?

可能です。同意がなくても家庭裁判所は受理し、調停で話し合い、まとまらなければ審判で判断します。
ただし同意がないことは協議可能性への疑問として見られやすく、特に反対理由がDVなど安全問題に基づく場合は、共同親権のハードルが上がります。

Q. 共同親権になった後に再婚したらどうなる?

再婚しただけで共同親権が消えるとは限らず、実父母の共同親権は原則として継続し得ます。
ただし子どもが再婚相手と養子縁組をすると、親権者が切り替わる可能性があります。

Q. 子どもはどちらの親と住むことになる?

共同親権は親権の持ち方であり、同居の形を強制する制度ではありません。
生活の本拠は、学校や通学、支援者の有無など、子どもの生活実態を踏まえて別途定められます。

Q. 養育費が不払いでも共同親権への変更は申し立てられる?

申立て自体は可能ですが、不払いは「養育への関与が乏しい」事情として不利に働きやすくなります。

Q. すでに離婚が成立した後でも、この制度の対象になる?

なります。改正法の施行日(2026年4月1日)より前に離婚が成立していても、家庭裁判所への親権者変更の申立ては可能です。
ただし自動的に共同親権になるわけではなく、子の利益の観点から個別に判断されます。

Q. 変更手続きにはどのくらいの期間がかかる?

父母が合意しているケースでは調停で比較的早期にまとまることもありますが、対立があり審判まで進む場合は、半年〜1年以上かかることも珍しくありません。
争点が複雑になりそうな場合ほど、早めに弁護士へ相談し見通しを立てておくことが重要です。

10. 既に離婚していても共同親権への変更は可能だが、家庭裁判所の手続きが必要

2026年4月1日に施行された改正民法により、既に離婚して単独親権となっている場合でも、家庭裁判所の手続きを通じて共同親権へ変更できる可能性があります。

ただし自動切替ではなく、現状は原則として維持されます。


変更の可否は父母の希望ではなく子の利益が中心です。

協議が成り立つ見通し、離婚後の関与の実績、養育費の履行、安全性の確保など、共同で運用できる現実性が問われます。

特にDV・虐待や強い対立がある場合は認められにくく、面会交流や養育費の履行実績があれば必要性・実現可能性を説明しやすくなります。


次の行動としては、まず現在の戸籍関係や養子縁組の有無を確認し、親子交流・連絡・養育費などの記録を整理することが有効です。

見通しに不安がある場合は、家庭裁判所手続きに詳しい弁護士に早めに相談し、子どもの生活を守る設計から逆算して進めることをおすすめします。

11. 共同親権・親権のことでお悩みなら、一新総合法律事務所へ

共同親権への変更が認められるかどうかは、家庭の状況によって大きく異なります。

ひとりで判断せず、まずは離婚問題に注力する弁護士へご相談ください。

共同親権への変更をお考えの方も、単独親権を維持したい方も、まずはお気軽にお問い合わせください。

一新総合法律事務所では、離婚問題に注力する「離婚チーム」を組織し、定期的な勉強会・事例検討を通じて専門知識を共有していますので安心してご相談いただけます。

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一新総合法律事務所では、離婚問題に注力する「離婚チーム」を組織し、定期的な勉強会・事例検討を通じて専門知識を共有していますので安心してご相談いただけます。

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この記事を監修した弁護士

弁護士 橘 里香

橘 里香
(たちばな りか)

一新総合法律事務所 
理事/弁護士

出身地:沖縄県那覇市 
出身大学:青山学院大学法科大学院修了
新潟県弁護士会子どもの権利委員会副委員長を2019年から務めています。
離婚チーム長を務め、主な取扱分野は、離婚(親権、養育費、面会交流等)、男女問題。そのほか相続、金銭問題など幅広い分野に精通しています。
メンタルケア心理士の資格を活かし、法的なサポートだけでなく、依頼者の気持ちに寄り添いながら未来の生活を見据えた解決方法を一緒に考えていきます。

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