専業主婦は離婚時に財産分与を受けられる?チェックすべきポイント
離婚について悩んでいる際に、一番問題となるのは離婚後の生活とお金についてではないでしょうか。
特に専業主婦(または専業主夫)の方は、離婚時に財産分与で財産をちゃんと分けてもらえるのか、どれくらい受け取ることができるのか、と不安になる方も多いかと思います。
今回は夫婦がともに築いた財産についての分配である「清算的財産分与」について、専業主婦はどのくらい財産分与を受けることができるのか、財産分与の対象となるものについて詳しく解説していきます。
1.専業主婦の離婚時の財産分与
専業主婦でも財産分与は受け取れるの?
専業主婦であっても、共働きの夫婦の場合と同様に離婚時の財産分与は受け取ることができます。
婚姻期間中の収入は、一方が家事労働や育児によって貢献したことにより得られたものと考えられるため、原則、夫婦の共有財産となるからです。
もし、相手から「専業主婦(専業主夫)は収入がないのに財産を分けるのはおかしい」という主張をされたとしても、婚姻期間中の財産形成はあなたの貢献によるところもあるのですから、専業主婦が財産分与を受け取ることはけしておかしいことではないのです。
受け取る権利のある財産は離婚時にしっかりと請求しましょう。
専業主婦が受け取れる財産分与の割合
財産分与とは夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際または離婚後に分けることをいいます。
財産分与には以下の3種類があります。
・清算的財産分与…夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の分配
・扶養的財産分与…離婚後の生活保障
・慰謝料的財産分与…慰謝料的要素を含めた財産分与
一般的に「財産分与」という場合は、主に清算的財産分与のことを指します。
財産分与の割合についてですが、夫婦の寄与度は、特段の事情のない限り、原則「平等」とされることから、基本的には2分の1の割合で財産分与を行います。
この原則は専業主婦であっても変わりません。また、子どもの有無も関係ありません。
ただし、夫(妻)の職業が経営者や特殊なものである場合や、妻がどのくらい家事に寄与(貢献)したかなど、個別の状況により財産分与の割合は異なってきます。
この点については後で詳しく説明します。
また、婚姻後に取得した財産は、仮に名義が夫名義(もしくは妻の名義)となっていても、夫婦の協力により得られた財産であれば、「実質的共有財産」となり、財産分与の対象となります。
2. 財産分与の割合が減少するケースとは?
専業主婦としての貢献度が極めて低い
専業主婦であるのに婚姻期間中に家事や育児をほとんどしていなかったという場合には、その貢献度により財産分与額が減少する可能性もあります。
ただし、家事分担について、お互いが納得したルールでの負担割合である場合には、貢献度が低い場合にも問題とはなりません。
客観的な資料に基づき、考慮すべき事情がないにも関わらず、仕事もせず家事・育児も放棄していたような状態であることが認められれば、夫婦の協力義務に反する行為として、財産分与の割合は減少する可能性が高まりますが、一般にそのような立証は簡単ではありません。
過度に期待することは禁物といえるでしょう。
夫(妻)が経営者や特殊な職業
夫(または妻)が経営者や、特殊な能力を必要とする職業であった場合には、財産分与の割合が修正されることがあります。
これは、夫の収入が、夫自身が兼ね備えた能力によるものであるところが大きいと判断されるためです。
また、経営者である場合に、法人名義の財産を「夫婦の共有財産」とすることは原則としてありません。
法的には法人と個人(経営者)は別人格であるとされているからです。
ただし、個人事業種の場合や、夫婦で経営に携わっていたなど個別の事情により、法人名義の財産についても財産分与の対象となることがあります。
財産分与の割合が増える場合も
婚姻期間中に、配偶者に浪費があったり、財産分与についてお互いの合意があったりする場合などは、財産分与の割合が大きくなることもあります。
個々の事情によるところが大きいですので、弁護士に相談することが大切です。
3. 財産分与の対象となるものは?
財産分与の対象となるもの
離婚時の財産分与では、「婚姻後に夫婦が協力して形成、維持してきた全ての財産」が名義を問わず対象になります。
これを「夫婦共有財産」といいます。
財産分与の対象には、現金、預貯金、不動産(家や土地)、自動車、有価証券、投資信託、生命保険や学資保険の解約払戻金などあらゆる夫婦共有財産が含まれます。
また、生活費の不足による借金や住宅ローンなどのマイナス財産(負債)も財産分与の対象となります。
持ち家についてはローンの状況によっても手続きが異なってきますので、特に注意が必要です。
財産分与の対象とならないもの
財産分与の対象となるものは、「婚姻期間中に形成した財産」となるため、夫婦の一方が独身時代から所有していた預貯金、親から相続した財産、親族から個人に対して贈与を受けた財産、そして別居後に取得した財産は分与の対象とはなりません。
これを特有財産といいます。
実際の離婚調停などでは、特有財産の主張がなされることはとても多いのですが、特有財産であると認められることは、実は簡単ではありません。法的な論点も多いので、自分一人で判断せずに弁護士に相談した方がいいでしょう。
年金について
婚姻期間中に納められた厚生年金については、財産分与の対象となり夫婦で分割することができます。
年金分割の対象となるのは、夫婦のどちらかが第2号被保険者として厚生年金を納付していた期間です。
これは一方が会社で支障なく勤務し厚生年金を納付してこられたのは、他方の家庭での支えがあったからであるという考えのもとに「年金分割制度」が導入されたからです。
収入のない配偶者(または第2号被保険者の扶養の範囲内で働いているパートタイマーなど)であれば、第3号被保険者となりますので、相手の合意がなくとも年金を2分の1受け取れる「3号分割」が可能です。
3号分割は年金事務所での手続きが必要ですが、この手続きは請求者が単独で行うことができます。(※2008年4月1日からの保険料のみ対象)
退職金について
離婚の前に、すでに退職金が支払われている場合、その退職金が残っている状態であれば財産分与の対象となり得ます。
一方で、離婚時には退職金は支払われておらず、将来支払われる見込みがある退職金については、原則として財産分与の対象とはなりません。
離婚から退職金の支払いまでの期間に、勤務先の倒産や懲戒解雇、転職といった事態が発生すれば、退職金の金額や支払い自体がない場合もあるからです。
ただし、退職金が支払われることが確実である場合や、個別の事情により退職金を財産分与の対象とした過去の事例もありますので、弁護士に相談するのがよいでしょう。
4. 財産分与における注意点
財産分与の請求には期限がある
財産分与は離婚の話し合いと同時に取り決めることが多いですが、財産分与の取り決めをしないまま離婚した場合でも、後から改めて財産分与について話し合うことも可能です。
ただし、財産分与の請求は離婚が成立してから2年以内という請求期限がありますので注意が必要です。
離婚後の生活費について
専業主婦であれば、離婚後に仕事を見つけるまでの期間は経済的自立が難しいことが考えられますし、子どもの養育やご自身の年齢、病気などの理由からすぐには働けないといったこともあります。
このような一方が経済的に困窮するなどの特別な事情がある場合には、離婚後の生計維持を目的とした「扶養的財産分与」を配偶者に求めることができます。
ただし、扶養的財産分与は、あくまで離婚後の生活費をサポートするために限定的に認められるものです。
必ず認められるというものではないので注意が必要です。
子どもがいる場合には、養育費という形で月々の支払いをを請求することもできますので、総合的に考えるのがよいでしょう。
5. 財産分与の取り決めについては弁護士にご相談ください
財産分与の流れ
何をどのように分けるのかについて、まずは協議(話し合い)によって決めることになります。共有財産を洗い出し、それぞれの項目について財産評価を確認します。
次に、財産分与の割合や分配方法について取り決めます。
離婚後に支払いが滞った場合に備えて、離婚協議書や公正証書のかたちで協議した内容について残しておく必要があります。
話し合いで決まらない場合には、家庭裁判所へ調停を申し立てます。
調停でも合意に至らなかった場合には、訴訟や審判によって裁判官に判断してもらうことができます。
財産分与について弁護士に相談するメリット
当事者同士の話し合いは、お互いが感情的になってしまうことも少なくありません。
弁護士にご依頼いただくことで、あなたに代わって相手方との交渉を行い、財産分与の対象財産について適切に主張、請求することができます。
専業主婦の方で、財産分与や離婚後の生活について不安を感じられている方は、弁護士に一度ご相談ください。
受け取ることのできる財産分与の金額は、個別の事情により変わってきます。
適正な割合で財産分与を受けられるよう、弁護士があなたに代わって交渉、請求いたします。
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