再婚したら養育費はどうなる?免除・減額されるケースについて解説

養育費を支払う側や受け取る側が再婚した場合に、養育費の支払いに影響はあるのでしょうか。
養育費は、離婚後の子どもの生活を安定させるための重要な役割を担っています。
一方で離婚取り決め時とはお互いの状況が変わり、相手が再婚したら養育費の支払いを打ち切りたい、自分が再婚したら養育費はもらえないの?といった双方の立場からの主張や疑問が生まれます。
本記事では、再婚後の養育費がどのように変わるのか、養育費が減額・免除できるための条件、養育費の金額変更手続きの流れを分かりやすく解説します
<このコラムでわかること>
●再婚したら養育費はどうなる?
●養育費の減免ができるケース・できないケース
1.養育費とは?
養育費とは、子供を監護・教育するために必要な費用のことです。経済的・社会的に自立していない子(未成熟子)が自立するまでに必要とする衣食住の経費や教育費、医療費、娯楽費など、すべての費用をまとめて養育費と呼んでいます。
親は子どもが経済的に自立できるようになるまで、子どもに対して扶養義務があります。
これはたとえ離婚した場合でも変わりません。

2.再婚が養育費に与える影響について
再婚によって家族構成や経済状況が変わると、養育費の減額や免除を検討することがあるでしょう。
しかし、再婚したからといってただちに養育費の支払義務がなくなるわけではありません。
子どもに対する扶養義務がある限りは、養育費は支払い続けなければなりません。
養育費の減額・免除には「事情の変更」が必要
再婚により養育費の減額や免除が認められるためには、基本的には「事情の変更」が必要となります。
事情の変更とは、養育費について合意した時点では想定できなかった理由により事情が変更されたという場合です。
法律上の考え方としては、父母双方の事情を踏まえて負担を公平にするように養育費の月額を見直しできるとされています。
例えば、離婚後に予期せずして失業したり、勤務先の業績悪化、病気やけがなどにより減収となった場合、「事情の変更」が認められ養育費の減額を検討することになります。
では、再婚によって事情変更が認められるケースはどのようなものがあるでしょうか。
受け取る側、支払う側それぞれの立場でみていきます。
養育費を受け取る側が再婚した場合
受け取る側の再婚を理由にただちに養育費を減額することはできません。
再婚相手と子どもが養子縁組を行ったかどうかが判断のポイントになります。
再婚相手と子どもの養子縁組
再婚相手が子どもと養子縁組を結ぶと、法的に親子関係が生まれます。
この場合、再婚相手(養父または養母)が子どもに対して第一次的な扶養義務を負うことになります。
実親(父親または母親)の扶養義務は第二次的扶養義務となりますので、養育費の減額または免除が認められる可能性が高くなります。
ただし、養子縁組の手続きを行ったからといって扶養義務者でなくなるわけではなく、必ず養育費が減額・免除できるではありません。
再婚相手に子どもを扶養するだけの資力がないなどの場合には、実親に対して子どもの生活水準を維持するために必要な分の養育費の支払い義務が残ります。
また、支払う側が、「実子のために養育費を払いたい」という意向がある場合は、養親と実親から養育費を二重に受け取ることも問題になりません。
子どもが再婚相手と養子縁組を行っていない場合には、基本的には養育費の減額・免除はできません。
養子縁組をしない状態で再婚相手の扶養に入っている場合には、再婚相手の年収や経済状況によっては養育費の減額請求できる場合もありますが個別の事情により判断が異なりますので弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
養育費を支払う側が再婚した場合
一方で、養育費の支払い義務者が再婚すると、扶養家族が増えるといった生活の変化や、新しい家族との生活費を優先したいという思いから、減額を求める状況が出てくるかもしれません。
しかし、再婚しただけでは支払い義務はなくなりません。
養育費の減額・免除については、受け取り側の生活状況や子どもの利益がどう変わるかも合わせて考慮されます。
再婚相手との子どもが生まれた
再婚して新たに子どもが生まれた場合、扶養すべき人数が増えることにより、被扶養者一人当たりに対する扶養義務の割合が減少することにより、減額が認められる可能性が高くなります。
ただし、単に新しい子どもが増えたという理由だけでは、養育費の減額が認められるわけではなく、あくまで既存の子どもの生活や教育への配慮を欠かさない形で、減額や取り決め変更の妥当性を慎重に検討することが必要です。
元配偶者との間で養育費の取り決めがなされる前に、不倫などの事情で再婚相手がすでに妊娠していた場合は、子どもが誕生したからといって取り決め後からの「事情の変更」とは認められずに、養育費が減額されない可能性もあります。
再婚相手の連れ子と養子縁組
再婚相手の連れ子と養子縁組を行った場合、連れ子との間に法的な親子関係が成立することになります。
連れ子に対して第一次的扶養義務を負うことになりますので、養育費の減額が認められる可能性が高くなります。
連れ子と養子縁組を行わない場合、実子の養育費支払い義務に対して影響はありません。
ただし、連れ子がまだ幼く再婚相手が働けないといった事情がある場合には、再婚相手に対する扶養義務の観点から養育費の減額が認められる可能性もあります。
再婚相手と養子縁組をしないデメリットについて
再婚しても養子縁組を行わない選択肢を取る場合、法的な扶養義務はこれまでどおり実親が主となります。
しかしながら、例えば相続の観点では、養子縁組をしていない場合は、再婚相手が子どもの育児や生活費に協力していたとしても、法的には“親子関係”が生じていない状態ですので、再婚相手の遺産に対して子どもは相続する権利がありません(ただし、養子縁組をしない場合でも、遺言書や生前贈与などの方法で財産を継承することは可能です)。
最終的に養子縁組をする・しないは、子どもの意思や家族全体の状況を踏まえて慎重に検討したほうが良いでしょう。
3.養育費の変更や調整方法
再婚による事情の変更を理由に養育費の減額交渉を行う場合、まずは相手方(元配偶者)に事情を説明し、話し合いによる合意を目指しましょう。
話し合いでの合意が得られない場合は家庭裁判所へ「養育費減額調停」を申し立てます。
調停では、調停委員を介して話し合いが行われ、支払い能力や実際の子どもの生活を総合的に判断した上での結論を目指します。話し合いで合意に至れば、裁判所が調停調書を作成し、その内容は強制力を持つものとなります。
調停で話がまとまらず審判に移行すると、裁判官が双方の資産状況を示す資料や意見を精査して結論を下します。
養育費減額調停の申し立てに必要な書類
養育費減額調停の申し立てに必要な書類等は以下のものがあります。
・養育費調停申立書
・未成年者の戸籍謄本
・申立人の収入関係がわかる資料(源泉徴収票や給与明細など)
・収入印紙(未成年の子ども一人につき1200円)
・郵便切手(裁判所に納めるため)
申立書の書式等は家庭裁判所のHPからダウンロードできます。
家庭裁判所▶養育費請求調停の申立書
4.減額後の養育費の計算方法
離婚する際の養育費の算定にあたっては、裁判所が提示している「養育費算定表」によって目安となる金額を算出します。
離婚後にいずれかが再婚したことにより養育費の変更をする場合には、再婚によって変更した事情を考慮して、「標準算定方式」を使用して目安となる金額を算出する必要があります。
計算方法はとても複雑ですので、一度取り決めた養育費の減額を交渉する場合には弁護士などの専門家への相談をおすすめします。


5.養育費をめぐるトラブルとその対処法
養育費の減額・免除について、話し合いによる合意が得られずに一方的に支払いを停止されたり、再婚の事実を隠されたりするケースは少なくありません。
養育費は子どもの生活基盤となる必要不可欠なものですので、まずは冷静に状況を確認し、法的手段も視野に入れて早めの解決を目指さなければなりません。
養育費の支払いを勝手に打ち切られた場合
元配偶者から一方的に養育費の支払いを打ち切られた場合の対応としては、まず内容証明郵便などで督促を行い、未払いとなっている部分について再度支払いを求めることが考えられます。
その際、過去の支払い実績や取り決め内容を示すための書面を準備しておきましょう。
養育費の支払いに関して家庭裁判所での調停・審判を経て取り決めていた場合には「履行勧告」を行うことができます。
養育費の不払いが発生した際の注意点しては、養育費の不払いに対する請求には期限があるため、支払いを打ち切られた場合には、早急に対処することがとても重要だということです。
養育費の支払いについて明記した書面がない場合には、養育費の支払い請求のために調停を申し立てした時点を養育費を受け取ることのできる始期とする例が多く、また、支払い義務が明確になっている場合でも、基本的には支払期限から5年経過してしまうと時効となり養育費が受け取れなくなっていまいます。
ただ養育費は毎月発生するものですので、未払い期間の一部が時効にかかってしまっても、まだ5年を経過していない期間の部分については請求できます。
支払いに応じてもらえない場合は、強制執行の手続きに移ることも可能です。
公正証書や審判・調停調書があれば、給与の差し押さえなど具体的な手段をすぐに取ることができます。
養育費に対する強制執行は給与の差し押さえをされることが多く、監護親(受け取る側)から強制執行を取り下げない限り、将来にわたって継続的に給与から強制的に養育費が徴収されることになります。
また、勤務先にも養育費不払いの事実を知られることとなります。支払う側は、どんな事情があるにせよ一方的に支払いを止める行為は避けるべきです。


再婚を隠された場合の対応策
養育費を受け取る側が再婚した事実を伏せていた場合でも、それ自体で直ちに養育費の支払い義務が免除されるわけではありません。
ただ、家計状況や子どもの環境が変わっている可能性があるため、現在の相手の状況を正確に把握する必要があります。
ただし、相手の再婚の事実を知らずに養育費を支払っていた場合でも、原則的に返還請求は認められません。
そのため、まずは再婚の有無や新たな扶養関係の状況を確認し、必要に応じて、養育費の減額や支払い継続について改めて協議を行うとよいでしょう。
話し合いが難しければ家庭裁判所の調停を活用するのも選択肢です。
相手の再婚を知る手段としては、子どもの戸籍を取り寄せることで、相手方(元妻・元夫)と子どもたちの入籍先を追跡することができます。
離婚時に養育費を取り決める際に、再婚の通知義務を取り付けておくことも有効です。
6.再婚における養育費の問題は弁護士へご相談ください
養育費の取り決めについて、協議離婚の場合は協議書にサインするだけで終わってしまうケースもありますが、離婚後の養育費のトラブルを回避するには、離婚時に養育費についてきちんと取り決めを行い、公正証書の形で残しておくことがとても大切です。
減額や増額など将来的な変更を想定し、どのように手続きを進めるのかも話し合っておくと安心です。
特に相手の再婚や、養育費などお金に関する問題は、当事者間での話し合いが難しく感情的な対立を招きやすいものです。
再婚してご自身の事情が変更したからといって、自動的に養育費の支払い義務がなくなるわけではありませんし、養育費が減額・免除になるケースは個別の事情により判断も異なってきます。
支払う側が新たな家族が増えたことにより家計が厳しくなった場合でも、子どもに対する扶養義務はなくなりません。
当事者間の話し合いや家庭裁判所での調停といった手続きによって、双方が納得できる解決策を模索することが大切です。
第三者である弁護士を交え、法的なアドバイスを受けながら冷静かつ公平に話し合いを進められれば、トラブルを最小限に抑えられるでしょう。
子どもの将来を見据えて、誠実に対応することを心がけましょう。
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